現代宗教界用語集2:仏教十大宗派
現代宗教界用語集2:仏教十大宗派
かなり久しぶりだけど書いてみる。
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仏教十大宗派とは、いわゆる既成仏教教団(伝統仏教教団とも)の中で多数の寺院や僧侶を擁する大規模教団のことで、具体的には天台宗、高野山真言宗、真言宗智山派、真言宗豊山派、浄土宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、臨済宗妙心寺派、曹洞宗、日蓮宗である。いずれも宗教法人格を持つ。『宗教年鑑平成27年度版』によると、1000所以上の末寺などを抱える既成教団はこの10教団に限られる。
基本的には江戸時代以来の本末関係が発展して教団が形成されたが、明治以降に多数の寺院を配下にして規模を拡大した教団もある。戦前は国家の保護と統制を受けた。
同じ人員が教団(宗派)役員と本山役員の両方を兼任する体制を宗本一致と呼び、またそれぞれを別の人員が務める体制を宗本分離と呼ぶ(もちろんどちらの場合も最高責任者は兼任)。宗本一致制を取るのは高野山真言宗、真言宗智山派、真宗大谷派、臨済宗妙心寺派で、それ以外は宗本分離制を取っている。宗本一致は比較的規模の小さい教団に多いが、特殊な経緯を歩む真宗大谷派は例外的である。また真言宗豊山派は、智山派と同じ程度の規模だが、東京の宗務所と奈良の総本山長谷寺が離れているので宗本分離制を取っている。浄土宗では知恩院が離脱して独立教団を構えていた時代もあったため、教団と本山は全く別個の組織となっている。
小さな教団では、教団の予算規模より本山の予算規模のほうが大きいことが珍しくないが、これらの教団では教団の予算のほうが大きい傾向にあり毎年、数十億円の予算を計上している教団もある。地域的なかたよりが比較的少なく、ほとんどの都道府県に末寺や教会が分布し、仏教界全体でも発言力がある。いずれも教団立の大学があり、政治や社会の各方面に大きな影響力を持つ。
戦前の制度を引き継ぎ、最高責任者を管長と称する教団が多い。教団と教義の象徴であり、無答責とするため、教団実務のトップを別に置き、宗務総長(総長、宗務長)などと呼んでいる。両者は天皇と総理大臣の関係と同じである。宗教法人法に基づく代表役員は宗務総長が就くことが多い。ほとんどの教団に議会があり、地区ごとに選出された議員が予決算や規程案を審議、議決する。政党にあたる会派もある。
常勤職員がいる僧侶養成機関を持ち、提携する他の小規模教団の僧侶の養成を受け入れることも珍しくない。
■十大宗派一覧
名称、所属宗教団体数、所属教師数、通称
- 天台宗3336所、4171人。通称は山門派(さんもんは)(寺門派(天台寺門宗)に対する区別)。
- 高野山真言宗3638所、6152人
- 真言宗智山派2900所、3682人。
- 真言宗豊山派2650所、3251人。(同じ新義系である智山派と合わせて智豊(ちぶ)とも呼ばれる)
- 浄土宗7052所、10871人。通称は鎮西派(ちんぜいは)、知恩院派(西山三派に対する区別)。
- 浄土真宗本願寺派10329所、19510人。通称は本派(ほんぱ)、お西。
- 真宗大谷派8705所、17366人。通称は大派(だいは)、お東。
- 臨済宗妙心寺派3365所、3393 人。通称は妙派(みょうは)。
- 曹洞宗14559所、16029人
- 日蓮宗5171所、8146人。通称は身延派、一致派(勝劣派(法華宗)などに対する区別)。
数字は文化庁編、2016年『宗教年鑑 平成27年度版』より
宗教団体には宗教法人格がないものも含まれる
教師は宗教者のこと、定義は教団によって異なるが、僧侶のことと考えてよい。
信者数は当てにならないので省略した。
平成28年7月15日更新