私設現代宗教研究所ブログ

日本の現代宗教に関する情報を発信していきたいと思います。不定期更新

退位特例法成立、宗教界への影響

天皇陛下の退位特例法が成立した。これに伴い神社界は明治以来の祭祀制度の大改革に迫られる。なぜなら、現代の神社祭祀は、宮中祭祀を軸に組み立てられ、宮中祭祀天皇の祖先祭祀が過半を占めているからだ。


これまでは前天皇=故人ということを前提として制度が組み立てられてきた。上皇という存在は全く想定外だ。天皇の命日の祭祀である先帝祭を重視し、それ以前の三代の天皇の祭祀(先帝以前三代の例祭)も重要視された。これからは次の天皇昭和天皇の祭祀を行うことになると思われるが、どういう呼称となるのか。どのような理念が提示されるのか。


これらの改革は、宮中祭祀を担当する掌典職が進めていると推測される。表向き政府と無関係の天皇家の私的雇用人である。掌典職は神社界と密接な人脈を持つが、決して一枚岩ではない。


もっとはっきりというと、掌典職の立場と、神社界の立場は異なっている。

戦前なら神社局なり神祇院なりが国の機関という立場で事を進めることができた。しかしそのような制度は今はない。神社界がこの改革にどの程度関わることができているのか。おそらく困難な状況に置かれているのではないか。


天皇退位をめぐっての神社界の動揺は既に明確に現れている。


仏教界でも皇室の祖先祭祀に関わり続けている寺院は珍しくないが、個々の寺院が必要に応じて対応するだけに留まるだろう。