私設現代宗教研究所ブログ

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現代宗教界用語集3:戦前の宗教関係団体

宗教界用語集:戦前の宗教関係団体

■教団連合
諸宗同徳会盟:1868年(明治1年)12月に興正寺に諸宗の幹部が集まって結成。
仏教各宗協会:1889年(明治22年)、島地黙雷、芦津実全、釈宗演、土宜法龍などが集まって設立。『仏教各宗綱要』編纂で日蓮の四箇格言を削除したいわゆる四箇格言問題が起こる。(1986『名僧物語3』、澁澤光紀2002「現代教学の検証」『教化情報』)
宗教家協和会:井上哲次郎が1906年(明治39年)5月に設立。諸宗教の協力を目指す。『近代大谷派年表』。
仏教各宗管長会議?
真宗各派協和会:現在の真宗教団連合
日本基督教会同盟:1911年(明治44年)12月19日設立。会長は本多庸一。翌年2月10日に発会式。1917年(大正6年)2月24日、改訳『新約聖書』が完成し、10月刊行。『日本キリスト教史年表』。
臨済宗七派聯合布教団:現在の臨黄合議所。
古義真言宗連合:現在の種智院大学を創設。
真言宗各派聯合法務所
日蓮門下統合期成同盟会:1902年(明治35年)4月29日30日に設立。『顕本法華宗年表』

日本基督教連盟:1922年(大正11年)5月20日の全国基督教協議会で「日本基督教連盟」設立を決定。翌年11月13日に設立大会(『近代大谷派年表』。『日本キリスト教史年表』では11月14日に「成立」とのみある)。1941年(昭和16年)8月6日、日本基督教連合会と改称。当初はプロテスタントの連合団体だったが、どこかの時点でカトリック(日本天主公教会)も加わったらしい。(『日本キリスト教史年表』)

大日本仏教会:1912年(大正1年)2月に内務次官の床次竹二郎の提唱で教派神道仏教キリスト教の各派が集まった「三教会同」を発端として設立された仏教各宗派懇話会が起源(1900年(明治33年)の仏教懇話会に淵源があるとするのは誤りという)。1914年(大正3年)に機関誌『政教新論』を創刊。1916年(大正5年)に「仏教連合会」と改称。日中戦争が勃発すると組織強化のために1938年(昭和13年)7月11日、財団法人仏教連合会となる(28日登記)。国民精神総動員中央連盟や対支文化工作協議会に加盟。大陸では北京の仏教同願会、上海の中支宗教大同連盟にも加盟活動した。1940年(昭和15年)7月15日に「財団法人大日本仏教連合会」と改称。紀元2600年事業として橿原神宮外苑に記念植樹を行った。翌年、内閣興亜院の指導で興亜仏教協会を吸収合併し、3月24日「財団法人大日本仏教会」と改称した。大日本仏教会の初代会長は木辺孝慈・真宗木辺派管長、2代会長は酒井日慎・日蓮宗管長、3代会長は郁芳随円・浄土宗管長が務めた。加盟団体は1943年(昭和18年)時点で13宗28派、47道府県仏教会、樺太仏教連合会、台湾仏教会の計77団体があった。金属供出では各仏教会を通じて梵鐘・仏具の回収を担った。
組織内に興亜局が置かれ、日本が進出する各地で国策に協力した。1944年(昭和19年)9月に解散し、財団法人大日本戦時宗教報国会となる。法人格は連続していないが、戦後の全日本仏教会の前身団体とされる。(大澤広嗣2015)

大日本戦時宗教報国会:1941年(昭和16年)12月、文部省の主導で政府と宗教界の相互連絡のために「宗教団体戦時中央委員会」設立。1944年(昭和19年)9月29日、宗教関係の各団体を廃止統合し、「財団法人大日本戦時宗教報国会」を設立。この時、解体された団体は、教派神道連合会、財団法人神道奨学会、財団法人大日本仏教会、日本基督教連合会、宗教団体戦時中央委員会、仏教音楽協会など。翌日、東京丸の内の大東亜会舘(現・東京会舘)で発会式を行った。会長を文部大臣、理事長を文部省教学局長が務め、文部省に事務所を置いた。総務局、神道局、仏教局、基督教局があった。活動は内地で宗教者の動員と戦争遂行の宣伝に終始し、外地での活動はほとんどなかった。
敗戦直後の1945年(昭和20年)10月に「財団法人日本宗教会」と改称。1946年(昭和21年)6月2日、「財団法人日本宗教連盟」となり、のち現在の「公益財団法人日本宗教連盟」となる。(大澤広嗣2015)

大日本宗教報国会:内閣総理大臣を総裁とする大政翼賛会の主導で1941年(昭和16年)5月31日設立。神道教派連合会(ママ)、大日本仏教会、日本基督教連合会が賛助団体となる。千家尊宣が初代理事長を務めた。しかし翌年3月に解消された。(大澤広嗣2015)

教派神道連合会(教派連):1895年(明治28年)、神道同志会として設立。当初は黒住、神宮、大社、扶桑、実行、大成、神習、御嶽教の8教団が参加。神理、禊、神道大教を加え、1899年(明治32年)に神道懇話会と改称。神道修成派、金光、天理が加盟して1912年(大正1年)に神道教派連合会と改称。1932年(昭和7年)に現在の教派神道連合会の名称になった。その後、脱会、新加盟した教団がある。(『新宗教事典』)

日本宗教懇話会:1924年(大正13年)6月25日、神道宣揚会の呼びかけに神仏基有志が参加して結成(『近代大谷派年表』)。井上哲次郎、補永茂助、遠藤隆吉、神崎一作、和田対白、野口末彦らが賛同し、有力者に働き掛けて実現した。1928年(昭和3年)6月5日から4日間、昭和天皇即位を記念して明治神宮外苑日本青年館で日本宗教大会を開催し、教派神道仏教キリスト教から1145人が参加。この会議では平和、教育、社会、思想の4部会が設けられ、それぞれ、新渡戸稲造、井深梶之助、矢吹慶輝、姉崎正治が部会長を担当した。この会議の成功を受けて、1931年(昭和6年)5月18日から3日間、日本宗教平和会議を開催。世界宗教平和会議日本委員会(昭和5年6月3日設立。『近代大谷派年表』)の主催という形で行われ、翌年にアメリカ・ワシントンで開催予定の世界宗教平和会議(「世界宗教者平和会議」ではない)にむけて日本の宗教界の意見を調整が行われた。満州問題などで国際緊張が増したため、アメリカでの会議は開かれなかったが、日本宗教平和会議は戦後の宗教間会議のモデルとなった。(『新宗教事典』)

世界宗教連合会:大本開祖の出口王仁三郎らによって設立された国際的な連合団体。中国・北京の悟善社で大正14年5月20日設立。道教、救世新教(悟善社)、仏陀教とイスラム教・仏教キリスト教の一部が参加。のち朝鮮の普天教、ドイツの白旗団も加盟した。本部を北京に置き、京都府亀岡市が東洋本部となった。組織が脆弱でまもなく消滅したが、その後も大本は人類愛善会を結成して国際的な連携を図った。(『近代大谷派年表』『新宗教事典』)


■海外・植民地関係
日蒙仏教連合会:田中舎身ら、大正4年4月7日設立。『近代大谷派年表』。
東方仏教徒協会:大正10年4月、鈴木大拙が設立。『近代仏教スタディーズ』。
日本仏教エスペランチスト連盟:昭和7年10月15日設立。『近代大谷派年表』。
日満仏教協会:昭和11年4月10日、東京で発会式。『近代大谷派年表』。
京都仏教興亜会:昭和14年2月23日設立。『近代大谷派年表』。
北支日本仏教連合会:昭和15年4月1日設立。宮谷法含が理事。『近代大谷派年表』。
大連仏教奉公会:昭和16年2月21日設立。東本願寺大連別院に事務所を置く。『近代大谷派年表』。
興亜宗教記者連盟:昭和17年設立。『近代大谷派年表』。
興亜宗教協会:興亜仏教協会とは別?
中支宗教大同連盟
関東州宗教報国団
財団法人仏教圏協会
東亜仏教
大菩提会 ダルマパーラと釈興然が設立
満洲仏教総会
広東日本仏教連合会
関東州仏教総会
朝鮮仏教協和会
南京日本仏教連合会
江蘇日本仏教連合会
華北蒙彊仏教連合会
武漢日本仏教
上海日本仏教

興亜仏教協会:1940年(昭和15年)7月2日、真宗本願寺派本願寺築地別院で創立総会。明和会を前身とする。日本が進出する地域での宗教工作が期待された。官民一体の組織だった。1941年(昭和16年)1月にはタイに真言宗智山派僧侶で智山専門学校教授(東京帝国大学講師)の山本快龍と真宗大谷派僧侶の藤波大円、オランダ領東インドには曹洞宗僧侶で駒澤大学教授の杉岡規道、フランス領インドシナには真宗本願寺派出身で東京帝国大学助教授の宇野円空真言宗豊山派僧侶で大正大学教授の久野芳隆を派遣を決めた。ただし、実際には宇野の代わりに宇津木二秀が派遣された。まもなく内閣興亜院の指導で財団法人大日本仏教連合会に吸収合併され、3月24日「財団法人大日本仏教会」となった。(大澤広嗣2013)

興亜宗教同盟: 1942年(昭和17年)4月2日、内閣総理大臣を総裁とする大政翼賛会興亜局の呼び掛けで、神道教派連合会(ママ)、大日本仏教会、日本基督教連合会、大日本回教教会、東京イスラム教団が参加して設立。大政翼賛会と文部省の間での調整がつかず、設立が遅くなったという。(『近代大谷派年表』、大澤広嗣2015)

国際仏教協会:井上哲次郎を会長とする団体。学術を通して国内外で文化工作活動を行っていた。ベトナムの『越南大蔵経』の刊行が計画されたが実現はしなかった。『海外仏教事情』、"Young East"を発行。大東亜仏教研究所が設置されていた。(大澤広嗣2013)

■青年会
万国仏教青年連合会 明治35年、桜井義肇が設立。『近代仏教スタディーズ』。
仏教青年伝道会 明治35年12月27日設立。明治44年6月24日、浅草に伝道会館開設。『近代大谷派年表』。
日本基督教青年会同盟(YMCA) 明治36年7月設立。『近代大谷派年表』。
京都五条仏教青年会 明治38年設立。『近代大谷派年表』。
日本基督教女子青年会(YWCA) 明治38年10月17日、設立。会長は津田梅子。『近代大谷派年表』。
東京帝国大学大谷学生会 明治41年11月設立。『近代大谷派年表』。
京都仏教青年会 明治41年11月21日設立。『近代大谷派年表』。
東京帝国大学仏教青年会 大正8年3月設立。大正13年11月仏教青年会館建設。『近代大谷派年表』。
西部日本仏教青年会連盟 昭和2年4月設立。『近代大谷派年表』。
高倉仏教青年会 昭和4年9月20日設立。『近代大谷派年表』。
全日本仏教青年会連盟 昭和5年11月設立。翌年4月3日、創立大会。大日本?。昭和18年7月4日、東京で大東亜仏教青年大会を開催。『近代大谷派年表』。
全日本真理運動青年会 昭和12年3月23日設立。『近代大谷派年表』。
国際仏教学生連盟 昭和13年10月設立。『近代大谷派年表』。
関西仏教青年会    :『近代大谷派年表』。
神道青年連盟協会:1931年(昭和6年)、田中義能が設立。機関誌『神道青年』。


■児童教育など
同盟連合会 仏教学校の連合会。明治39年12月9日設立。『近代大谷派年表』。
日本日曜学校協会 明治39年設立。翌年5月に第1回大会を開く。『近代大谷派年表』。
浅草本願寺大谷少年会 明治43年4月10日設立。『近代大谷派年表』。
仏教童話研究会 昭和4年2月設立。名古屋で。『近代大谷派年表』。
大谷派日曜学校連盟 昭和4年6月8日設立。『近代大谷派年表』。
朝鮮大谷派児童協会 昭和5年4月24日設立。『近代大谷派年表』。
子供研究会 仏教キリスト教天理教など各派の日曜学校関係者で大正6年9月19日設立。『近代大谷派年表』。
大谷派児童協会 大正4年10月設立。『近代大谷派年表』。
大谷派健児団連盟。『近代大谷派年表』。
全国仏教少年連合団



■同和関係
全国水平社:真宗思想の影響を受けている。『近代仏教スタディーズ』。
黒衣同盟 奈良県本願寺派僧侶の広岡智教が教団の差別構造の改革を唱えて結成。水平運動に呼応。本派本願寺有志革新団に改組?『近代仏教スタディーズ』。
一如会  本願寺派の部落問題に取り組む組織。大正13年10月に設立。梅原真隆が関与。『近代仏教スタディーズ』。
真身会 大谷派の部落問題に取り組む組織。大正15年3月設立。武内了温が中心的役割。『近代仏教スタディーズ』。
近畿融和事業連盟 昭和5年5月2日、長谷寺で結成。『近代大谷派年表』。
滋賀県下東西本願寺融和問題関係末寺協議会 昭和7年12月23日結成。『近代大谷派年表』。

■備考

大澤広嗣、2013「戦時期フランス領インドシナにおける宗教工作」『学習院大学 東洋文化研究』15
大澤広嗣、2015「昭和前期の仏教界と連合組織」『武蔵野大学仏教文化研究所紀要』31